2018.4.18(水)

生活保護基準の引下げを行わないように求める会長声明

 政府は,生活保護費のうち食費や水道光熱費に充てる生活扶助の基準を最大5%引き下げ,年間160億円を削減する2018年度の予算案を閣議決定し,2018年3月28日,同予算が成立した。
 同予算では,基準額が上がる世帯も存在するものの,生活扶助費が下がる世帯が全世帯の67%に及ぶ見込みであり,また,3歳未満の児童養育加算は月額1万5000円から1万円に,母子加算は平均2万1000円から1万7000円に削減され,学習支援費の定額支給も年間上限のある実費支給に変更して事実上削減されるなど,子どものいる世帯に大きな影響を及ぼすものである。さらには,都市部の高齢単身世帯の基準額は軒並み引き下げられる見込みであり,高齢者の生活にも大きな影響を与えることも看過できない。
 今回の生活保護基準引下げの根拠は,生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を世帯別に10に等分した下位10%の世帯階層)の消費基準に合わせるというものである。
 しかし,そもそも生活保護の捕捉率が2割ないし3割程度にとどまるものと推測される現状では,上記の第1・十分位層には,生活保護を受給せず,生活保護基準以下の生活を余儀なくされている世帯が極めて多数含まれている。そうすると,この度の引下げは,生活保護を利用せず,現在ですら「健康で文化的な最低限度の生活」を営めていない低所得者層の消費水準を対象としている点で合理性がないばかりでなく,この層を対象とすることにより,今後も生活保護基準をさらに引き下げることが可能であることから,「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しようとした憲法25条や生活保護法の趣旨に反するものである。
 さらに,生活保護基準は,憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であり,最低賃金,就学援助の給付対象基準,地方税の非課税基準,介護保険の保険料・利用料や障害者総合支援法による自己負担基準等の様々な適用基準と連動している。そうすると,生活保護基準の引下げは,生活保護受給世帯に大きな影響を与えるのみならず,その他の低所得世帯の生活にも影響を与え,結果として市民全体の生活水準の引下げをももたらすことになる。
 よって,当会は,生活保護基準の更なる引下げを行わないよう強く求めるものである。

2018年(平成30年)4月17日
函館弁護士会
会長 窪田 良弘

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