国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護士費用の抜本的改善 を求める会長声明
国選弁護制度は、憲法で保障された被疑者・被告人の権利擁護のための必要不可欠な制度であり、それを担っているのは個々の弁護士である。
袴田事件、福井女子中学生殺人事件と、相次いで再審無罪判決が出された。また、プレサンス事件、大川原化工機事件など、冤罪事件は跡を絶たない。刑事弁護活動の重要性が改めて認識されている。さらに、犯罪の成否に争いのないいわゆる自白事件においても、刑事弁護人は、被疑者・被告人の円滑な社会復帰に向けて、利用可能な社会資源を活用すべく調整を行うなど、より良い社会を実現するために、不断の努力を重ねている。
特に、国選弁護に関していえば、近年では9割近い被疑者が捜査段階において国選弁護人を選任し、ほぼ全ての事件において24時間以内に国選弁護人が指名されること等、その堅調な利用が確認されている。
もっとも、国選弁護事件の平均的な報酬は、一般的な弁護士が事務所経営を維持しながら適正な弁護活動を行うために必要な対価とは到底言い難く、昨今の物価上昇もさることながら、20年近くにわたり、国選弁護報酬はほとんど増加されていないばかりか、弁護活動のために必要な実費も、その一部しか支払われないというありさまである。
当会は、刑事弁護の重要性から、独自の予算措置を講じ、身柄拘束を受けた被疑者やその家族等の求めに応じ速やかに弁護士との面会を実現すべく、当番弁護士制度を設けたり、自白事件においても、被疑者・被告人の円滑な社会復帰支援のため、社会福祉士に更生支援計画の策定等を求めた場合等の費用支援を行うなど時代の進展に合わせ高度化する刑事弁護活動を、市民が費用負担の心配なく享受できる体制の拡充に注力してきた。
しかしながら、そもそもこれらの諸措置は、無罪推定の原則が憲法上保障される我が国において、本来全て国費によるべきものである。加えて、2025年(令和7年)7月に取りまとめられた「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめ報告書において挙げられている多岐に亘る新たな刑事弁護活動に対応するためには、国選刑事弁護の担い手の確保が喫緊の課題であり、そのためには、20年来ほとんど変わっていない国選弁護報酬体系や各種弁護士費用の抜本的な改善が必要不可欠である。
また、近時、佐賀県警察科学捜査研究所の職員によるDNA鑑定で不正行為が発覚したが、本来、捜査機関側の鑑定の信用性を争うべき事案は多く、数々の冤罪事件でも弁護側の科学的鑑定が無罪主張の柱となってきた。しかし、現行の国選弁護費用体系では、当事者鑑定の費用をはじめ、本来行われるべき多くの弁護活動の費用が賄われず、極めて不公平なものとなっている。その結果、証拠開示が不十分な中で人質司法に抗し、冤罪防止や更生支援等に鋭意努めるべき国選弁護人の活動が相当制約されているのである。
そもそも、国選弁護業務のための予算は160億円前後と極めて僅少な額で推移している。膨張を続ける100兆円規模の国家予算に占める割合も年々低下しており、人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れているという他ない。
よって、当会は、被疑者・被告人の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める。
令和8年(2026年)3月2日
函館弁護士会
会長 井口 直樹

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