再審法改正の早期実現を求める会長声明
第217回通常国会が開催されているところ、令和7年6月18日、再審手続に関する刑事訴訟法の一部を改正する法律案が野党6党による議員立法としてようやく衆議院に提出されるに至った。
国家による最大の人権侵害の一つであるえん罪を救済する手段たる再審手続は、現状わずか19条の条文であり、刑事訴訟法制定以来極めて不十分なものであった。このような状況にあって、現実の再審手続はすべて訴訟指揮に委ねられ、十分な証拠開示がなされない、また、証拠開示がされたとしても、その訴訟指揮の発動までに、長期間を要し、さらには、再審開始決定に対する検察官の即時抗告等により、再審開始決定の確定までに更なる期間を要することとなり、えん罪被害者に対する早期の救済の障害となっていた。
この点につき、今回提出された改正案は、特に、証拠開示制度の新設、再審開始決定に対する検察官の不服申立て禁止等を盛り込み、えん罪に対する早期解決の実現に向け極めて意義の高いものである。
えん罪は、前記のとおり、国家による重大な人権侵害であり、早急に救済されなければならないことは論を待たない。
令和6年9月26日、再審無罪判決が言い渡された袴田事件では、犯人とされた袴田巌氏が昭和41年8月18日に逮捕されてからその汚名を返上するまでに58年もの時間を要し、そのうち約48年は被疑者、被告人ないしは、死刑囚としての身体拘束を受け、まさに国家により袴田巌氏の人生が奪われたものといえる。
このような事態が、我が国において2度と繰り返されることのないよう、再審法の迅速な改正が必要である。
よって、当会は、国会に対し、第217回通常国会において、上記法律案を成立させ、再審法の改正を実現させることを強く求める。
令和7年(2025年)6月19日
函館弁護士会
会長 井口 直樹