2024.7.17(水)

最高裁判決を受けて、旧優生保護法の被害者の救済を求める会長声明

 令和6年(2024年)7月3日、最高裁判所は、裁判官の全員一致の判断によって、旧優生保護法が憲法13条及び14条1項に反しており、この法律の立法行為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けると判断し、旧優生保護法による被害について、民法の除斥期間を適用して国の損害賠償を否定することは、「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない。」と判断した。
 被害者の救済に道を開く正当な判断である。
 最高裁判所は、旧優生保護法の立法目的は、優生上の見地、すなわち、特定の障害等を有する者が不良であり不妊手術を受けさせることによって同じ疾病や障害を有する子孫を淘汰することにあったが、そのような立法目的自体が、当時の社会状況をいかに勘案しても正当とはいえない、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する旨述べ、旧優生保護法の下で、形式上本人の同意を得て行われる不妊手術についても、これを受けさせることは、その実質において、不妊手術を受けることを強制するものであることに変わりはないと判断した。
 今後は、旧優生保護法の下で、少なくとも2万5000人以上にのぼる、不妊手術を強いられて生殖能力を喪失した被害者に対する救済が急務である。
 報道によれば、旧優生保護法の被害者に対する一時金給付法の改正ないし新法整備の検討が開始されたようであるが、現行の一時金給付法に基づく申請件数は手術実施件数の1割にも満たず、補償金額も訴訟における認容額の数分の1に過ぎない。
 そして、旧優生保護法が平成8年(1996年)に廃止されてからも、長期間謝罪・補償の動きがなかったことからも明らかなとおり、優生思想は社会から根絶されていない。国は、被害者が申請しやすい制度で適正な金額の補償がなされるよう早急に法整備及びその周知をする責務があり、また、優生思想・障害者差別の解消に向け、真摯な対応をしなければならない。
 北海道は、旧優生保護法の不妊手術を積極的に推進してきた事実があり、都道府県の中で全国最多であった。
 当会としても、こうした経緯を踏まえ、基本的人権の擁護と社会正義の実現を担う弁護士の集団として、被害者の救済のため真摯に取り組む決意である。

令和6年(2024年)7月17日
函館弁護士会
会長 木下 元章

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