2023.5.26(金)

「袴田事件」の速やかな再審公判の開始と袴田さんに対する無罪判決を求める会長声明

 令和5年3月13日、東京高等裁判所は、袴田巖氏の第二次再審請求事件について、静岡地方裁判所の再審開始決定を支持し、袴田さんの裁判のやり直しを命じる決定を行い、その後再審開始決定が確定しました。
 袴田事件は、1966年(昭和41年)6月30日未明、旧清水市(現静岡市清水区)の味噌製造会社専務宅で一家4名が殺害された強盗殺人・放火事件です。
 同年8月に逮捕された袴田氏は、当初から無実を訴えていましたが、過酷な取調べを受けた結果、本件犯行を自白させられ起訴されました。袴田さんは、公判では無実を訴えていましたが、最高裁で死刑判決が確定しています。
 2014年(平成26年)3月27日の静岡地方裁判所が、再審開始を認めて裁判のやり直しを命じ、「耐えがたいほどの正義に反する状況にあると」として、袴田さんの身柄の解放(拘置停止)を命じましたが、検察官が即時抗告したことによって、再審開始決定が確定するまでに実に9年もの時間が経過しました。
 再審開始決定が確定したことにより、裁判のやり直しを行う再審公判が開始されることになりますが、報道によれば、検察官は、本年4月10日に静岡地裁で開かれた三者協議において、再審公判における立証方針を決定するために3か月を要すると述べたとされます。
 しかし、本件では、長期に及んだ再審請求手続において、本件の争点について、検察官と請求人の双方が主張・立証を尽くし、その結果、確定判決に合理的な疑いが生じたとの判断がなされています。このような本件の審理経過に照らせば、本件の実質的な審理は、再審請求手続の段階で既に尽くされているというべきであって、もはや新たな有罪立証を行うことは許されません。
 袴田さんは、現在87歳と高齢であることや、47年間もの長期間の身体拘束による拘禁反応の影響と思われる心身の状況をも鑑みれば、再審公判では、再審請求手続の審理の蒸し返しを許すことなく、その成果を尊重して、迅速な審理により、袴田さんに対する無罪判決が出されることを強く求めます。
 また、えん罪被害者を速やかに救済していくために、当会は、政府及び国会に対し、再審における証拠開示の法制化、再審開始決定に対する検察官の不服
申立禁止、再審公判の手続規定を含む刑事訴 訟法の改正を行うことを求めます。

令和5年(2023年)5月26日
函館弁護士会
会長 堀田 剛史

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