2022.8.23(火)

弁護人の取調べへの立会いに関し、北海道警察本部により令和3年12月27日付けで発出された通達(「被疑者取調べにおける弁護人の立会い申出等に対する対応について」)の撤回を求める会長声明

 北海道警察本部は、札幌弁護士会による被疑者の取調べ立会いなどに関する取組が報道されたことを受け、令和3年12月27日付「被疑者取調べにおける弁護人の立会い申出等に対する対応について(通達)」(以下「本通達」という。)を発出し、弁護人から被疑者取調べの申出があった場合に一律にこれを認めないとする方針を示し、北海道警察本部各部、所属の長及び札幌方面各警察署長に対し、この方針を所属署員に徹底するよう指示したほか、各方面本部長、函館方面各警察署長に対しても他の弁護士会において同様の取組がされた場合の参考とするよう指示した。
 被疑者は、取調べにおいて、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」権利(憲法38条1項、自己負罪拒否特権)を有し、警察官は取調べに際して、被疑者に対し、「あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない」(刑事訴訟法198条2項、黙秘権)。
 これらの自己負罪拒否特権・黙秘権を実質的に保障し、被疑者が適切に権利を行使するために、被疑者には弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受ける権利が保障されている(憲法34条前段は身体を拘束された被疑者の弁護人依頼権を保障しているほか、刑事訴訟法30条1項は、身体拘束を受けているかどうかを問わずすべての被疑者に弁護人選任権を認めている。)。
 被疑者が取調室において孤立無援とならず、適切に自己負罪拒否特権・黙秘権を行使するためには、弁護人が取調べに立会った上、適時に必要な助言を行うことが必要不可欠であり、そうすることが前述の弁護人依頼権を定める憲法及び刑事訴訟法の趣意に適うところである。
 それゆえに、警察官が犯罪の捜査を行うに当たって守るべき心構え、捜査の方法、手続等を定めた「犯罪捜査規範」(昭和32年国家公安委員会規則第2号)においても、「取調べを行うに当たって弁護人その他適当と認められる者を立ち会わせたときは、その供述調書に立会人の署名押印を求めなければならない。」(180 条2項)と弁護人が取調べに立会う場面を想定した手続を定め、弁護人の取調べへの立会いを否定していない。
 本通達は、弁護人から取調べの立会いの申出があった場合において、一律に立会いを否定するものであり、弁護人依頼権を定める憲法及び刑事訴訟法の趣意に反することは明らかであり、当会においても、本通達に基づき、または、本通達を参考として、弁護人の取調べへの立会いが否定されることを看過することはできない。
 そこで、当会は、北海道警察本部に対し、本通達に対し、強く抗議するとともに、本通達を直ちに撤回することを求める。

以上

2022年(令和4年)8月23日
函館弁護士会
会長 柳 順也

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