2022.7.13(水)

最低賃金額の大幅な引上げと中小企業へのさらなる実効的な支援等を求める会長声明

 2021年10月の公益財団法人連合総合生活開発研究所の調査によれば、1年前と比較した現在の賃金収入について、「かなり増えた」又は「やや増えた」と回答した者が19.3パーセントであるのに対し、「やや減った」又は「かなり減った」と回答した者が28.6パーセントであった。また、1年前と比較した世帯収入については、「かなり増えた」又は「やや増えた」と回答した者が16.6パーセントであるのに対し、「やや減った」又は「かなり減った」と回答した者が30.7パーセントであった。
 このように実際に働く者が収入の減少を実感している状況に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵攻の影響もあり、食料品や光熱費など生活関連品の価格は急上昇している。
 労働者の生活を守り、新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためには、最低賃金額の引上げが必要と言わざるを得ないのが現状である。
 確かに、昨年度は、最低賃金金額の全国加重平均金額は902円から930円へ、北海道の最低賃金金額は861円から889円へと引き上げられる結果となった。
 しかし、889円という時給を基準としても、労働者は、フルタイム(1日8時間、週40時間、月173時間)で働いても、月収約15万3797円、年収約184万円しか得られないことになる。ワーキングプアの基準となる年収金額は200万円とされているところ、現在の最低賃金金額では、子どもがいる若年層世代のみならず、あらゆる世帯が賃金のみで生活を維持することが難しい状況に変わりはない。
 政府は、2022年6月7日に発表した「新しい資本主義実行計画工程表」の中で、「最低賃金については、生計費、賃金、賃金支払能力を考慮しつつ、その引上げを図り、できる限り早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指す」と明記した。
 しかし、前述したとおり、働く者の生活そのものが厳しい現状に鑑みれば、現在の状況は「できる限り早期に」実現することを「目指す」というレベルにはなく、一刻も早い実現そのものが必要とされるレベルにある。
 また、最低賃金の地域間格差の問題は、未だ解決されないままである。
 地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方の間で、ほとんど差がないことが明らかになっている。これは、地方では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。
 以上の点からすれば、生計費の高さから都市部と地方の最低賃金の格差を正当化することは困難であり、最低賃金の地域間格差は、地方における人口流出や労働力不足を深刻化させる原因でしかないというべきである。
もっとも、最低賃金を引き上げることが人件費を増大させることは自明であり、中小企業の経営状況や雇用情勢に与える影響は決して少ないものではない。
 現在、国は、最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策として「業務改善助成金」制度を設けているが、予算が増額され、申請件数が伸びているものの、その利用件数が極めて少ない現状に鑑みれば、効果的な支援策がとられているとの評価は難しい。
 最低賃金金額を引上げて消費を増やし、経済の活性化を図るためには、我が国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように充分な支援策を講じることが必要であり、既存の支援策のさらなる拡充に加え、補助金支給や社会保険料の事業主負担部分の免除・軽減のほか、中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるための取引適正化支援等、長期的継続的に行われる中小企業支援策の強化が必要というべきである。
 以上より、当会は、中央最低賃金審議会、北海道地方最低賃金審議会及び北海道労働局長に対して、最低賃金の大幅な引上げを求めるとともに、国及び北海道に対し、最低賃金の引上げによる影響を受ける中小企業への十分な支援策を求める。

以上

2022年(令和4年)7月13日
函館弁護士会
会長 柳 順也

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