2015.12.9(水)

特定複合観光施設の整備の推進に関する法律案(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

第1 趣旨
 本会は,特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(いわゆる「カジノ解禁推進法案」,以下「本法案」という)に強く反対し,同法案ないしこれと同趣旨の法案が今後の国会で再提出されることにも強く反対する。

第2 理由

1 はじめに
 本法案は,一昨年に国会に提出されたが,様々な問題が指摘され審議が進まないまま昨年の衆議院解散により廃案になった。その後,本法案は第189回通常国会に再提出され,同国会は本年9月27日に会期終了となったものの,閉会中審査の手続きが執られたため廃案になっていない。
 本法案は,カジノを含む特定複合観光施設区域の整備推進を目的とするもので,一定の条件のもとで刑法上賭博罪として禁止されているカジノを合法化しようとするものである。本法案は,以下のとおり多くの問題点を含んでおり到底容認できない。

2 ギャンブル依存症の拡大,多重債務者問題の悪化
 ギャンブル依存症は,慢性,進行性,難治性の重篤な疾病であり,ギャンブルが原因で家族関係が悪化し,また,多重債務に陥って自殺に至る者も少なくない。カジノが解禁されれば,ギャンブル依存症の患者が増加するおそれがある。
 また,総量規制や金利規制を定めた貸金業法改正など一連の対策により,多重債務者問題が改善されてきたが,カジノが解禁されれば多重債務者問題が再び悪化する危険性がある。

3 暴力団・マネーロンダリング対策上の問題
 カジノ解禁により,暴力団が新たな資金源獲得のためにカジノ事業及びその関連事業に参入する可能性がある。また,カジノがマネーロンダリングに利用されることも容易に想定される。

4 青少年への悪影響
 本法案においては,カジノ施設がレクレーション施設などと一体して設置されることから,家族などで出かける先にカジノ施設が存在する。そのため,青少年らが幼少のころからカジノに接することにより賭博に対する抵抗感を持たないまま成長することになりかねず,青少年の健全育成に悪影響を及ぼす。

5 カジノによる経済効果への疑問
 本法案の立法目的には経済の活性化が挙げられているが,カジノ解禁による経済的効果については,客観的な検証がほとんど行われていない。また,仮にカジノ解禁による経済的効果があるとしても,上記の弊害を考えればこれを推進すべきではない。

 以上のとおり,本法案は多くの問題点を含むものであるから,本法案に強く反対するとともに,同法案ないし同趣旨の法案が今後の国会で再提出されることにも強く反対する。

2015年(平成27年)12月9日
函館弁護士会
会長 木下 元章

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