2021.7.21(水)

最低賃金額の引上げの確実な実行と中小企業へのさらなる実効的な支援を求める会長声明

 2021年(令和3年7月16日、中央最低賃金審議会は、2021年度の地域別最低賃金の改定について、都道府県の時給を一律28円引き上げるよう求める目安を答申した。目安どおり最低賃金が引き上げられた場合、最低賃金額の全国平均は930円となり、北海道の最低賃金は、現在の861円から889円まで引き上げられる。昨年の最低賃金が据え置かれたのと比べ、新型コロナウイルス流行前の引上げ率である約3%を回復することとなり、労働者の生活に対しても一定の効果が期待できることとなる。
 とはいえ、当該889円という時給を基準としても、労働者は、フルタイム(1日8時間、週40時間、月173時間)で働いても、月収約15万3797円、年収約184万円しか得られないことなり、ワーキングプアの基準とされる年収金額200万円に届かない。政府は、2021年(令和3年6月に発表した「骨太の方針」の中で、最低賃金についてより早期に全国加重平均を1000円とすることを目指すとしているが、子どもがいる若年層世代のみならず、あらゆる世帯が賃金のみで生活を維持することが難しい状況の是正はいまだ道半ばというべきである。
 日本商工会議所などの3団体は、この引き上げ案に対して、「大幅な引き上げは極めて残念で到底納得できない。」等と反対する姿勢を示している。
 昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産、廃業に追い込まれる懸念が広がる中、企業経営に与える影響を全く無視することはできないが、労働者の生活を守り、新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも、最低賃金額の引上げを後退させてはならない。
 そもそも最低賃金制度は、すべての労働者を不当に低い賃金から保護するセーフティネットとしての機能を有するものであり、労働者の健康で文化的な生活を確保するためには、先に述べた賃金のみで生活を維持することが難しい状況自体を早急に是正する必要がある。最低賃金引き上げによって少なからぬ影響を受けると懸念される中小企業への配慮は、最低賃金とは別の政策によって実行すべきである。
 この点に関して、現在国は、最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策として、「業務改善助成金」制度を実施している。しかし、必ずしも使い勝手の良いものとはなっておらず、利用件数はごく少数である。我が国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように充分な支援策を講じることが必要である。具体的には、諸外国で採用されている社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減することによる支援策等が有効であると考えられる。
 また、重要な課題として、最低賃金の地域間格差は未だ是正されていないことは指摘しなければならない。現在、北海道と東京都との間には、最低賃金額に152円の差があるが、双方が同額の引き上げであれば、その差が埋まることはない。地域経済の疲弊等を理由に上げ幅を縮減すれば、格差はさらに拡大しかねない。
 地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方の間で、ほとんど差がないこ
とが明らかになっている。これは、地方では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。
 以上の点からすれば、生計費の高さから都市部と地方の最低賃金の格差を正当化することは困難であり、最低賃金の地域間格差は、地方における人口流出や労働力不足を深刻化させる原因でしかないというべきであり、将来的には全国一律最低賃金制度の導入も検討すべきであるが、現時点において少なくともこれ以上の格差の拡大は許容されてはならない。
 以上より、当会は、北海道地方最低賃金審議会及び北海道労働局長に対して、最低賃金の目安どおりの引上げを求める。
 また、国及び北海道に対し、最低賃金の引上げにより影響を受ける中小企業への十分な支援策を求める。

2021年(令和3年)7月21日
函館弁護士会
会長 平井 喜一

カテゴリー