労働時間法制の規制緩和に反対する会長声明
1 厚生労働省は、「高度プロフェッショナル制度」と称して、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を持つ労働者を対象として、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した特定高度専門業務・成果型労働制(以下「本制度」という。)の創設を含む労働基準法改正案を、今通常国会に提出する準備を進めている。
本制度の導入にあたっては、長時間労働防止措置として、1日単位での一定時間の休息時間を設けるか、1か月又は3か月単位で健康管理時間(事業場内にいた時間及び事業場外で労働した時間)の上限を設けるか、あるいは1年単位で104日以上の休日取得を与えるかを選択することが必要としているが、上記年収要件の具体的な金額や長時間労働防止措置における休息時間及び健康管理時間などの具体的数字は省令で定めるものとされている。
2 現行労働基準法においては、労働時間の長さと賃金をリンクさせ、時間外・休日・深夜労働には割増賃金の支払を義務付けることで、間接的に長時間労働を抑制し労働者の生命及び健康を守ろうとしてきたのに対し、本制度は、労働時間と賃金のリンクを完全に切り離し、成果のためには時間外・休日・深夜労働を無給かつ無制限にさせることを可能とするものであり、昨年11月1日に施行された過労死等防止対策推進法にも逆行する。
長時間労働によって脅かされる労働者の生命及び健康は、労働者の年収の多寡によって守るべきか否かが左右される性質のものではなく、年収要件自体不合理なものであるし、それを省令で定めるとしている点も、その対象がなし崩し的に広がるおそれが大きく、到底首肯できるものではない。長時間労働防止措置も、その核となる休息時間及び健康管理時間などの具体的数字を省令で定めるとしている点で同様の問題があり、また、違反した場合の罰則も定められていない点でも実効性に疑問が大きい。
3 よって、当会は、本制度のような労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度を創設することには、強く反対する。
2015年(平成27年)3月23日
函館弁護士会
会長 室田 則之