2014.5.3(土)

憲法解釈の変更による集団的自衛権容認に反対する会長声明

1 現在、政府は、首相の私的懇談会である「安全保証の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告を受け、集団的自衛権行使容認に向けた憲法解釈の変更を閣議決定で行おうとしている。
 しかし、このような動きは、憲法の基本原理である立憲主義に違反し、恒久平和主義と平和的生存権を危うくするものであり、到底容認できない。

2 憲法は、憲法を最高法規と定めこれに反する法律等を無効とし、公務員に憲法尊重擁護義務を課すこと(憲法第98条第1項、第99条)によって国家権力を制限し、もって全ての人々が個人として尊重され人権を保障されるという立憲主義に立脚している。
 しかし、閣議決定の方法による憲法解釈の変更は、憲法によって制限されるはずの政府がその権限において憲法の解釈を変更する能力を持つことになる点において、憲法が国家権力を制限する規範であるという立憲主義の本質を無視している。また、憲法の変更は本来、憲法改正手続によりなされなければならなず、国民的議論を尽くす機会を与えることすらなく、閣議決定の方法によって解釈を変更することは、立憲主義に明らかに反する。
 そして、立憲主義の否定は、これにより守られる個人の尊厳と基本的人権の保障を危うくすることにもつながるものであり、到底許されるものではない。

3 憲法第9条は、第1項において戦争放棄、第2項において交戦権の否認を定め、憲法前文とあわせ、恒久平和主義を憲法の基本原理としている。これまで政府は、30年以上にわたり一貫して、憲法第9条を前提に自衛隊の保持とそれによる個別的自衛権の行使を認めるものの、同条のもとで許容される自衛権の発動については、我が国に対する急迫不正の侵害が存在し、この攻撃を排除するため他に適当な手段がなく、かつ、自衛権行使の方法が必要最小限度の実力行使にとどまることを要件とするとの解釈を採用しており、これを同条適合性の重要な担保とするとともに、その帰結として、集団的自衛権の行使はその範囲を超えるものとして憲法上許されないとしてきた。
 したがって、このような従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することは、憲法第9条の意義を否定し空文化するに等しく、憲法の基本原理である恒久平和主義に反するものとして許されない。

4 よって、当会は、67回目の憲法記念日にあたり、憲法の基本原理に反する解釈の変更による集団的自衛権行使容認に強く反対するものである。

2014(平成26)年5月3日
函館弁護士会
会長 室田 則之

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