2026.8.28(金)

「国旗の損壊等の処罰に関する法律」の廃止を求める会長声明

1. 2026年7月17日、「国旗の損壊等の処罰に関する法律」(以下「本法」という)が成立し、2026年8月13日に施行されました。
本法は、「国旗を大切に思う国民感情」を保護するものとされ、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」で公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者を、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処するというものです。
本法は、以下の通り、憲法上重大な問題があると考えるため、速やかな廃止を求めます。

2. 罪刑法定主義(憲法第31条)に反するおそれがあること
刑罰を科すにあたっては、どのような行為が処罰の対象となるのか、法律で明確に定められなければなりません(憲法第31条。罪刑法定主義)。
しかし、本法は、「不快」「嫌悪の情」といった抽象的で主観的な感情を犯罪の成立要件としています。そのため、どのような行為が犯罪に該当し処罰の対象となるのかが明確に定められているとはいえません。
これは、憲法が定める罪刑法定主義に反するおそれのあるものです。

3. 思想良心の自由(憲法第19条)が侵害されるおそれがあること
憲法第19条が保障する思想良心の自由は、国家から個人の尊厳を守り、民主主義を支える極めて重要な基本的権利です。
本法のように、「「国旗を大切に思う国民感情」を保護法益とし、刑罰をもって国旗への損壊行為を禁止することは、国民の国旗についての多様な感情を否定し、国旗を大切に思う感情を持つように強制することにつながりかねないものです。
このような法律は、憲法第19条の思想良心の自由を侵害するおそれがあるものです。

4. 表現の自由(憲法第21条)を侵害するおそれがあること
思想良心の自由がどれだけ保障されたとしても、思想良心の外部的発現である表現の自由が損なわれてしまっては意味がありません。
自分の所有する国旗を用いて様々な表現行為を行うことがあり得ますが、2で指摘したように、本法では、どのような行為が処罰の対象となる行為であるのかは不明確です。
したがって、国民は処罰を恐れて国旗を用いた表現を控えざるを得なくなってしまいます。これは表現活動に対する萎縮的効果をもたらし、表現の自由を侵害するおそれがあるものです。

5. 本法を制定・施行する必要性がないこと
現代の日本において、国旗の損壊行為が社会問題化しているために本法の制定・施行が急がれるというような立法事実はありません。
そのような状況で国民の思想良心の自由や表現の自由といった立憲主義・民主主義の前提たる基本的人権を侵害するおそれのある本法を制定・施行しなければならない必要性はありません。

6. まとめ
本法は、このように罪刑法定主義に抵触するおそれがあり、思想良心の自由や表現の自由が侵害されるおそれがあるなど、憲法上重大な問題がある一方で、制定・施行を必要とするような立法事実はありません。
一体なぜ、本法を成立させる必要があったのでしょうか。
当会は、本法の成立及び施行に強く抗議し、今後、その速やかな廃止を求めます。

 

2026年8月27日
函館弁護士会
会長 兼平 誠也

カテゴリー