2021.11.8(月)

道立江差高等看護学院におけるパワーハラスメント被害者に対する速やかな救済と教育環境の改革・改善を求める会長声明

 道立高等看護学院は、北海道の地域医療を担う看護職員の養成を目的として設立され、地域の人々の健康と福祉の向上に貢献できる看護の実践者を育成することを使命とする専修学校である。人々の心身の健康に密接に関わる看護職の養成に際して、権利擁護に逆行するパワーハラスメントが横行することがあってはならないことは、本来言うまでもない。しかし、このたび、道立高等看護学院において、複数の教員によって、学生への執拗なパワーハラスメントが、長年にわたって行われていたことが報道等によって明らかになった。

 道立江差高等看護学院(以下、「江差看護学院」という。)においては、北海道の設置した道立江差高等看護学院を巡る諸問題への対応に関する第三者調査委員会(以下、「第三者委員会」という。)が令和3年10月19日に北海道に提出した報告書によれば、江差看護学院において34件ものパワーハラスメントが認定された。第三者委員会がパワーハラスメントとして認定した事実行為は、およそ教育に携わる人間が行ったとは思えない人間の尊厳を著しく損なう論外な言動であり,その多くは違法と評価せざるを得ない。

 調査権限や調査期間に限界のある第三者委員会の調査によっても、これほどの件数のパワーハラスメントが認定されており、パワーハラスメントには至らないものの不適切な指導・対応として分類された事案や、被害の解明が困難でパワーハラスメントとして認定されなかった事案の存在なども考慮すると、江差看護学院においては、なお多くのパワーハラスメント事案が存在していたことがうかがえる。これほどのパワーハラスメントが横行していたということは、当該パワーハラスメントを行った職員のみならず、江差看護学院の組織、体質にも問題があったと言わざるを得ない。

 それゆえ、パワーハラスメントの被害を受けた学生ら(現在および過去の在籍者の双方)に対する被害救済と再発防止は、江差看護学院の設置者である北海道の責任であり、急務である。北海道は、第三者委員会の報告書提出を受けて、令和3年10月29日に学生らへの説明会を開催し、謝罪をしたが、今後の対応については検討事項の列挙にとどまり、具体的時期および内容はいまだ明らかではない。北海道は、本件被害の発覚から既に相当期間が経過していることも踏まえ、被害者の訴えを真摯に受け止め、可及的速やかに救済策を示し、救済に着手する責務があり、強くこれを求めるものである。

 あわせて、江差看護学院の運営の改革・改善も急務である。第三者委員会も指摘しているように、教職員に対する人権擁護意識についての再教育、組織改革、人事刷新のいずれも重要である。江差看護学院において、今できることはすぐに行うべきであるが、組織運営や人事権の行使などについては、北海道が積極的に動かなければできないことであり、速やかな対応を求める。

2021年(令和3年)11月8日
函館弁護士会
会長 平井 喜一

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