2018.8.31(金)

地方消費者行政に対する財政支援(交付金等)の継続・拡充を求 める会長声明

 全国の消費生活センター等に寄せられる消費者被害やトラブルに関わる苦情相談件数は,近年90万件前後と高水準で推移している。その中でも,高齢化の進行に伴い,高齢者の消費者被害・トラブルが増加の一途を辿っており,判断能力が低下した高齢者の弱い立場につけ込む悪質商法・詐欺商法が深刻さを増している。
 また,民法の成年年齢の引き下げに伴い,判断能力の未熟な若年層の消費者被害を防ぐため,消費者教育の早期充実を図る必要がある。
 このように,高齢化や成年年齢の引き下げ等の社会情勢の変化に伴い消費者被害が広範囲化・深刻化していくことが予想される中,被害を未然に防止し, また被害の事後的な救済のために,地方消費者行政の一層の充実・強化が求められている。
 これまで国における地方消費者行政の充実・強化については,地方消費者行政推進交付金等(以下「交付金」という。)を通じて,財政的な支援が図られて きており,平成27年度及び平成28年度は50億円,平成29年度は42億円が予算計上されてきた(補正予算を含む。)
 しかし,平成30年度の消費者庁予算案においては,地方自治体から60億円を超える交付金の要求がなされていたにもかかわらず,その金額は24億円と大幅に縮減されている。
 そのため,地方自治体においては消費生活相談員や相談窓口の担当者が減員されることや,必要な消費者教育・啓蒙活動ができない事態が生じることが懸念され,消費者行政の大幅な後退をもたらし,ひいては行政サービスの受け手である国民に重大な不利益をもたらすことは明らかである。このことは,当会も所属する北海道弁護士会連合会が,平成30年3月2日付「地方消費者行政の一層の強化を求める理事長声明」で詳細に指摘したとおりである。
 今後も地方消費者行政の充実・強化のためには,地方自治体の現場の声を反映して,その財政的基盤を確立することが何よりも重要であり,そのための国 からの支援が必要不可欠である。
 したがって,平成31年度の地方消費者行政強化交付金の金額を従前の地方消費者行政推進交付金と少なくとも同程度の水準で確保し,10年程度は継続するべきである。
 また,地方公共団体による消費者相談情報のPIO-NET登録,悪質業者への行政処分等の効果は,その地域の消費者のみならず,国が行う制度改革や法執行・情報提供などを通じて国の消費者行政にも密接に関連していることに鑑みれば,地方公共団体のこのような事務費用に対する国の恒久的な財政的措置を講じるべきである。
 以上の次第であり,当会は,国による恒久的な財政支援とさまざまな施策への実効ある支援及びこれらを通じた地方消費者行政の一層の強化を求めるものである。

2018年(平成30年)8月22日
函館弁護士会
会長 窪田 良弘

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